県立横浜翠嵐高等学校
緑豊かな三ツ沢の丘にある神奈川県立横浜翠嵐高校。大正3年の創立から90余年。昨年、神奈川県教育委員会より「学力向上進学重点校」の指定を受けた同校は、独自入試1期生の大学入試を迎えた今春、合格実績において飛躍的な伸びをみせた。神奈川を代表する公立進学校として名実ともにナンバーワンを目指す横浜翠嵐高校は、新校長に鈴木浩之先生を迎え、新たな改革のセカンドステージに入ったという。鈴木先生に今後の横浜翠嵐高校の将来について抱負を伺った。
公立進学校のトップランナーとして
「学力向上進学重点校」の指定から1年。その中でも横浜翠嵐高校は、他の進学重点校のモデルとなっている。魅力ある教科指導はもとより、3年間を通して学習指導と進路指導をリンクさせる進学支援システムを早くから整え、生徒保護者の希望を実現する進学実績向上に真摯に取り組んでいる。注目度の高さは群を抜いていたといえよう。この件に関して、鈴木校長は「本校は、進学校として神奈川県立高校のトップとなることが使命と考える」とお話しになる。
今春(平成20年春)は、卒業生271名のうち、4年制大学への現役合格者数が延べ599名と昨年を上回った。また、過年度生を含む合格実績においては、東大9(昨年4)、東工大11(昨年4)、東京外語大5(昨年2)などの難関国立大、また慶應義塾大70(昨年36)、早稲田大112(昨年80)などの難関私立大において、大きく合格者数を伸ばしている。この実績に関しては「東大の実績ばかりが注目されるが、そればかりを追い求めているわけではない。しかし、県立高校からもきちんと東大に合格できること、それが県民の願いであり実現することが我々の責務である」と鈴木校長は決意を熱く語った。今年の合格実績で、横浜翠嵐高校が神奈川県立高校でトップであったとマスコミ等で報道されているが、翠嵐生の実力を考えるとまだまだ伸ばせる可能性があるとの実感をお持ちだ。昨年の取材の際、「『早稲田・慶應義塾』を(翠嵐生の合格の)スタンダードにできたら」と川口副校長はお話になったが、今春の実績からは、その言葉もいよいよ現実のものとなりつつある。横浜翠嵐の今回の実績は、他の進学重点校を牽引する大きな力となるであろう。
学力向上進学重点校としての先進的な取り組み
鈴木校長によると、翠嵐生は入学時の調査で7割の生徒が首都圏の難関国公立大を志望しているという。その希望の実現のために、横浜翠嵐では様々な取り組みをシステムとして完備している。 授業時間は95分。自ら学び考える学習に十分な時間を確保し、「骨太」のカリキュラムで生徒を鍛える。1・2年次は、芸術科目以外のほぼすべてが必修となっており、理科では化学Ⅰ・物理Ⅰ・生物Ⅰを、数学では数Ⅰ・数A・数Ⅱ・数Bをすべての生徒が履修する。2年次終了次点で必修科目70単位を取得、卒業に必要な単位数74単位をほぼクリアし、受験体制に入る。3年次では自己の進路希望にあわせた科目選択ができるようになっているが、その中には「日本史研究」「地理研究」といった、大学受験を意識した学校設定科目も用意されている。1年次の英語Ⅰ(4単位)、2年次のライティング(2単位)、2年次の数学Ⅱ・B(6単位)において、習熟度別学習を導入し、生徒の能力を十分に伸長させる授業展開を行っている。
先進的な取り組みであった土曜講習も定着し、先生の自作によるオリジナルテキスト等も充実しているという。また、昨年から部活動の夏期合宿と日程の重複を避け、生徒が参加しやすい環境とした夏季講習も今年はさらに講座数を大幅に増やして実施する予定。学校が一丸となって結果を出すことに意欲を燃やしている。さらに今夏、PTA主体でOB会の協力も得て、全教室にエアコンが設置されることで、学習環境のさらなる整備が進む。進学校としての学習環境の整備にこだわり、PTAやOB会もそれを全面的に支援している。
進路指導では、定期考査以外にも、年間2回の学力テストと全員受験の校外模試を実施し、生徒の学力状況を的確に把握し進路指導に活用。また、生徒・保護者向けの進路説明会は学年別に実施、初回はすでに4月に実施している。「本校生徒のセンター試験の結果を考えても、まだまだ難関国公立大の合格者数を伸ばせる余地がある。今後は国公立2次試験に早くから意識を向け、学習の到達目標もそこに置いて指導する」と更なる改革に余念がない。1年生の進路説明会の資料には、大学の学費の知識から、東大の2次試験の問題分析までが並ぶ。いかに難関大学への受験を身近なものとして早期に意識させるかが重要と、先生方の熱意と工夫が垣間見える。「しかし」と鈴木校長。「翠嵐生は、自分のことだけ考え勉強ばかりしていればいい人材ではない。知識・知性・教養を兼ね備え、いろいろな立場の人のために社会に貢献する人間となるよう真のエリートたる教育も忘れてはならない」
本当の意味での一流校に
「真のエリートは自らをストイックにコントロールするすべも身につけなくてはならない。そういった意味で生徒には規律のある態度を求めたい。制服=身だしなみ、校則=社会のルールやマナー。これらはエリートの必須条件である。本校では、生徒に未来のエリートとしての使命感を持たせ、我々も生徒をきちんと教え育て、真に社会に貢献できる人間となってもらうことを重視している」と生徒指導の重要性もお話しになった。「『言わなくても分かる』は教育の放棄。学校における教育活動はすべて学びのチャンスであり、我々はそれを無駄にしてはいけないと思う」とは川口副校長の言葉だ。
けっして勉強ばかりでないのが翠嵐である。部活動等で対人関係を学ぶのも大切なことであるとして、30ほどの部活動・同好会のほか、放送・新聞・国際交流などの委員会もあり、生徒の加入率は80%以上である。また、大いに盛り上がる三大行事として、6月に翠翔祭(文化祭)、9月に体育祭、11月に芸術祭が開催される。部活動や学校行事の取り組みについて、「進学校として適正なバランスを取って活動してもらう」との方針で、土日のうち少なくとも1日分は休む、また平日は「学年+2時間」の学習時間が取れるように活動する、などの指導がなされているという。学校が責任を持って「生徒に合格を掴ませる」ためのシステムを構築することは重要なことだといえよう。 「とにかく、来春の結果を見てほしい。神奈川にとどまらず公立進学校の雄となり、本校はもとより県立高校全体のブランド力を上げていきたい」と鈴木校長は力強く結ばれた。
公立で学び、高い進学目標を達成したい、そして真のリーダーとしての素養を身につけたい。そんな希望を持つ人にとって、横浜翠嵐高校にチャレンジする価値は高い。今後の入学者選抜説明会は以下の日程でおこなわれる。横浜翠嵐高校を志望する中3生は、まずは一度、自分の目と耳で、校長先生や先生方の思いを確かめてみよう。
(2008年5月取材)
校長先生からのメッセージ
横浜翠嵐高等学校は、「大平凡主義」を教育活動の柱として掲げ、常識的な判断や行動のできる社会性豊かな人材の育成をめざすとともに、県内屈指の進学校として、94年の歴史と伝統を誇っています。昨年度からは「学力向上進学重点校」の指定を受け、神奈川における公立進学校のトップランナーとして、質の高い独自問題による入学者選抜、良質な授業の提供、土曜講習や夏季講習の充実、キャリア教育の推進、エアコン・自習室の整備など、様々な教育活動や教育環境の充実と改善に努めています。こうした数々の取り組みが、今春の大学入試における大幅な躍進に結びついたことはいうまでもありません。しかし、私たちはこの結果が、十分であると思っているわけではありません。さらなる飛躍を目指し、それが現実のものとなるよう、ひたむきな努力を続けているところです。本校に入学を希望している中学生の皆さん、私たちと一緒に、新しい翠嵐の歴史を切り拓いていきましょう。