最近、読んだ本の中で、心理学者の出口保行さん著の中で興味深い点がありましたので紹介させていただきます。
出口さんによると、小さい子どもには、「早くしなさい」「さっさと片付けなさい」「いい加減、支度をしなさい」などの急がせる言葉はNGだそうです。理由は、小さい子どもには事前予見能力が育っていないため、なぜ急がなければならないのかがわからないそうです。この事前予見能力は生まれながらに持っているのではなく、発達の中で身に付けていくものだからです。
親は、「急がないと学校に遅刻してしまう」「約束の時間に間に合わない」など、急ぐ必要性を理解していますが、子どもには難しいのです。よって、「学校まで15分かかるから、8時までには家を出ないと間に合わないよね」「8時に家を出る為にはどうしたらいいかな」など早くするべき理由を伝えて、子どもに考えさせなければなりません。これが事前予見能力のトレーニングになります。
このことで、急ぐ理由を理解し、自分で時間を見ながら動けるようになります。さらに、本人に考えさせるという意味では、「いつやる?」「今は何をする時間?」のように問いかける声掛けも良いでしょう。親は忍耐力が必要ですが、このひと手間ふた手間が重要です。
また、事前予見能力を育てる為には、日常の中で「逆算して考える」ことをさせるととても有効です。大人は自然にやっていますが、子どもは現在に集中しており、将来の目標から逆算することに慣れていません。特に夏休みの宿題を終わらせようとするときに良くみられる光景ではないでしょうか。夏休みも終わりに近づいても残りの日数では終わらないような、たくさんの量の宿題がまだ残っている・・・。こんな時にも逆算して考えさせることで、この事前予見能力は育っていきます。
以上のように、親からの視点と子どもからの視点には、大きな隔たりがあります。私も出口さんの本を読んでいて気づかされたのですが、この事前予見能力は徐々に身に付けていくもの、ということです。子どもに身に付けさせるためには、普段から子供のそばにいる親が少しずつ関わっていく必要があるのです。急がねばならない時ほど、子どもの事前予見能力を育てるチャンスと捉えたいですね。
中萬学院 個別指導事業部 加藤寛樹